ニキビが治まったあと、跡が残った。

その事実が、当時の僕には信じられなかった。 「治った」と「跡が残った」のあいだに、これほど落差があるとは思っていなかった。 診察室では「もう炎症は引きました」と言われていた。 ただ、鏡の中の頬骨の上には、いくつかの輪郭が、はっきりと残っていた。

そこから何年か、いろいろなことを試した。


最初は、ホームケアだった。

ピーリング系の洗顔、ビタミン C 系の美容液、保湿の強い乳液、レチノール系の夜の塗布。 成分名を、ここで深追いするつもりはない。 当時の僕は、それぞれを 2-3 ヶ月、ローテーションで試していた。

効いたものも、効かなかったものも、両方あった。 ただ、「効いた」という感覚も、振り返ると怪しい。 時間が経っただけかもしれない、という疑いは、いつも残った。


途中から、皮膚科や美容皮膚科にも通った。

ケミカルピーリング、ダーマペン、レーザー系。 施術の種類はいくつかあって、料金もまちまちだった。 固有名詞や院名は、ここでは出さない。 ただ、医療の側に頼った時期があった、ということは書いておく。

医療を使ったというのは、恥ずかしいことではないし、誇ることでもない。 ただ、選択肢のひとつとして使った、というだけだ。


時間が経って、ある日、昔の写真と並べた。

そのとき、初めて、自分でも分かるくらいに変化していることに気づいた。 毎日鏡を見ているときには分からなかった違いが、 数年単位の時間差では、はっきり見えた。

何が一番効いたのか、僕には断定できない。 複数のことを、長く続けた、ということだけが事実だ。


ただ、いまも、跡は完全に消えたわけではない。

照明や角度によっては、はっきり浮かぶ日がある。 そういう日は、ある。 ただ、もう、毎朝それを数えることはなくなった。


「これで治る」とは、誰にも言えない領域だと思う。 時間と、複数の介入と、自分のなかでの折り合いが、組み合わさってできるものだ。

そういう種類の「効果」があることを、ここに書いておきます。

整える、というのは、長い動詞です。